■県内企業の事業継続計画(BCP)策定状況

 今年7月1日(水)付の東奥日報に、「災害時の事業継続計画『BCP』県内企業 策定率過去最高 人材不足で4割が未策定」という記事が掲載されました。

 「事業継続計画(BCP)」とは、地震・台風といった自然災害や、感染症、サイバー攻撃などの緊急事態による影響をあらかじめ想定し、中核となる事業を維持・早期復旧させるために定める計画です。Business Continuity Planの略称で、いざという時に企業の存続を支える重要な備えです。

 「策定率過去最高」という見出しからは、BCPの策定が進んでいる印象を受けます。しかし、記事をよく読むと、県内企業のBCP策定率は15.2%にとどまっていました(株式会社帝国データバンク青森支店調べ。調査対象163社中、回答79社)。これは、同じく帝国データバンクが実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査2025年」の全国BCP策定率20.4%よりも低い数字です。青森県内企業ではBCP策定がまだ十分に進んでいないのが現状です。

 記事では、BCPを策定していない理由として、「リスクの具体的な想定が難しい(34.4%)」や「時間が確保できない(28.1%)」が挙げられていました。つまり、災害や緊急事態を想定する知識や経験が社内に不足していること、さらに日々の業務に追われ、BCP策定に人や時間を割けないという実態が明らかになりました。

■青森県中小企業家同友会による豪雪アンケート結果

 今年2月、青森市は記録的な豪雪に見舞われ、都市機能が麻痺するほどの大きな影響を受けました。

 私は青森県中小企業家同友会(以下「同友会」)の会員ですが、同友会青森支部では、この豪雪災害を受けて、青森市内の会員100法人に対し「豪雪に関するアンケート」を実施しました。私もアンケートの作成、集計、分析などのお手伝いをさせていただきました。

このアンケートでは、BCPの策定状況についても尋ねています。その結果、BCPを「策定している」または「定期的に見直している」と答えた企業は36%でした。一方で、「策定していない」が37%、「BCP自体を知らない」が8%でした。帝国データバンクの調査結果15.2%よりは高いものの、依然として多くの企業がBCPを十分に備えていない、あるいはBCPという考え方そのものを認識していないのが実情です。

■いったん落ちた売上はなかなか回復しない

 同友会のアンケートでは、豪雪による被害の実態についても確認しています。

 被害として大きかったのは、従業員の通勤困難(30%)と売上の減少(26%)でした。特に売上については、同友会がアンケート調査した4月時点で、「やや回復している」が54%、「回復していない」が6%を占めており、一度落ち込んだ売上が短期間では回復しにくいことがうかがえます。

 災害の影響は、その場の混乱だけでは終わりません。売上の減少、取引先への対応遅れ、従業員の離職、信用の低下など、後からじわじわと経営に影響を及ぼします。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2020年のコロナ禍、2022年のロシアによるウクライナ侵攻、そして今年のアメリカとイランによる紛争など、予期せぬ出来事は突然起こります。災害や紛争そのものを避けることはできませんが、BCPによって被害や影響を小さくすることは可能です。

■災害はいつ襲ってくるかわからない~アオ診はBCP策定をお手伝いします

 7月1日付の東奥日報では、帝国データバンク青森支店の本木悟史支店長が、「従業員との連絡体制などの簡単な対策から取り組むことが必要」とコメントしています。まさにそのとおりで、最初から完璧な計画を作ろうとする必要はありません。まずは、「豪雪で出勤できそうにない時はどうするか」「連絡が取れないときの対応をどうするか」といった身近な課題から、事前に話し合って決めておくだけでも大きな第一歩になります。

もちろん、インターネットで検索すればBCPの事例は数多く見つかりますし、生成AIを使えば、業種や規模に応じた案も得られるでしょう。しかし、BCPは作って終わりではありません。実際に行動するのは企業であり、社長であり、社員です。私は、計画を実際の行動につなげることを「魂を入れる」と表現しています。

東奥日報の記事からも、県内企業には「BCPを策定している余裕がない」という現実が見えてきました。だからこそ、青森県中小企業診断士協会(略称「青森診」、通称「アオ診」)では、企業の実情やニーズに合ったリスク分析やBCP策定をお手伝いしています。

 まだ暑い日が続き、「冬のことなど、まだまだ先のこと」と感じるかもしれません。しかし、来年もまた豪雪に見舞われる可能性は十分にあります。準備に早過ぎるということはありません。むしろ、今から取り組むことが、いざという時の大きな差になります。

青森では6月25日(木)には最大震度6強、7月1日(火)には最大震度4の地震が起き、熊本は再び大きな地震に襲われ、千葉や石川、富山、福井では、今まで経験したことのないような大雨で被害も出ました。考えたくはありませんが、災害やサイバー攻撃は、いつ私たちの事業や生活を脅かすかわかりません。

 BCP策定でお悩みのこと、ご相談したいことがあれば、ぜひアオ彦にお声かけください。喜んでご協力させていただきます。

副会長兼専務理事  青木 恒